「そろそろ年なんだから、自覚したほうがいいんじゃないの」
・・・おまえの言うことはいつも正論だ。わかっている、そんなことは。でも俺は
まだ頑張りたいんだ。
「そうは言っても春先にはヘルメット丸見えの覆面を追いぬいて捕まったんだろ? 集中力の維持ができなくなってきている、そうだろ?」
・・・そうだな。
「そんなんじゃピーク時の8割の腕を維持するのがやっとじゃないの?」
・・・そう、35歳が俺のライダーとしてのピークだった。 今はあらゆる面で7割程までに衰えてしまっている。 ライディングスキルはもちろん、空間把握能力も対応スピードが落ちてきている。
「日々衰えていく自分を実感しながら走り続けているんだ?」
・・・そのとおり。昨年よりも、先月よりも、昨日よりも、俺は確実に衰えている。それは隠しようのない事実として俺に突きつけられ続けている。
「今の仕事の3年契約、1年目は高評価だったんだって?」
・・・ああ、お前も知ってるだろうが、今後数年が人生の勝負どころかもな。
「仕事の責任もあるから休みもそうそう取れないしねぇ」
・・・確かにそうだ。だが充実した余暇があるから仕事をやる気になるんだ。
「ふ~ん。そんな衰えた状態で、帰ってくることができるの?」
・・・だからバイクも乗り換えた。R1200GSA、現状では最善の選択肢だ。
「でも覆面も見えないほどに疲弊した状態で走っていたんだろ?」
・・・ああ、そうだな。それは事実だ。
「その前もそうだろ?山口で」
・・・そうだな、以前ならあんなことはありえなかった。
「しばらく大人しくすれば?仕事も大事な時期なんだし」
・・・いや、でも俺は
「俺ならバイクと一度距離を置くよ。いつでも戻れるだろ?そんな時期なんだよ」
・・・
「来年は本厄だろ?後厄抜けるまで大人しくするのも悪く無いだろ。一生のうち2年くらい乗らない時期があるくらいのが人生に彩りがあってよかろう?」
・・・お前の言うことはいつでも正しい。それは事実だ。今までもずっとそうだった。お互いが若いが故の無知はあったが。
「俺の言いたいことはそんなところだ、自分の人生は自分で舵を切れ。んじゃまた明日」
・・・俺はお前が大嫌いだ。仕事のためには全てを犠牲にするお前は俺とは違う存在だ。
・・・そんなお前が、俺と同一人物とは信じられない。
しかし、結論は出た。今は頭を低くしてやり過ごそう。その分仕事に集中しよう。
俺はバイクを降りることにした。
復活は2年後を目指すがまだわからない。
目的地未定はこれにて活動を終息します。
いままでありがとうございました。
追記:今後は車で出没しますので関係者よろしくです。